子曰く、礼に非(あら)ざれば視(み)ること勿(なか)れ。 礼に非ざれば聴くこと勿れ。
少し前になりますが、あるピアニストがライブ中に観客が発した雑音により集中が途切れ、演奏を中断しライブが当初の予定通り行われなかったという事がありました。それについてちょっと言いたくなったので書きました。(ライブには行ってません)
「観客のせきで集中力がそがれてしまった」 キース・ジャレットさん、コンサート中に何度も演奏中断
http://topics.jp.msn.com/entertainment/tv/article.aspx?articleid=4288605
NAVERでまとめられていたお二方のブログから一部引用させて頂きますが、どちらの心情も本当に良く解ります。
簡単に言うと、「お前らもうちょっと静かにできないのか」というのと「客の生理現象の音ごときでライブを放棄するな」という意見です。
>MY Favorite Things 「キース・ジャレット ソロコンサート」
>http://red.ap.teacup.com/mitsuyo/2325.html
> 私達はもう少し 静かにして静寂を守れたのではないかしら?
> 確かに咳を我慢し身じろぎもしない時間が続くのはそれなりに大変です。
> けれど、私達はその静寂の中から類いまれなる貴重な音を奏でるキースの「その音」を聞きに行ったのではないのかしら?
> だから、私達自身のために 静寂を守ると言う事ができたんじゃないかしら?
>AndreaとLucasの旅… 「キースジャレット」
>http://blogs.yahoo.co.jp/butchnomama/64277626.html
> もしも、咳が嫌なら気になってしかたないなら、スタジオで録音すれば良い。
> CDだけ売っていればええやんか。
> 人は生きて息をしている、そのときによって体調もかわる。
> わかっていても、どうしようもないときがある。
> 大事なのは一体感やないの?
> どんなに良い曲を紡ぐことができても、共有することができなかったら、意味ないやん。
> 人生の歓びを共有することが出来ないのやったら、
> あなたの音楽はなんなん?
で、私はこの件については演者と観客はどちらも責められるべきではないと思っています。
でももし誰かしらに責任を求めるとすれば、やっぱり運営側とかになるのかなあと思っています。
この日は結局、キースさんが萎えきっちゃってライブが完結する事なく終わりました。
演者は自分自身の演奏をする為に静かな環境が必要だった訳ですが、でもこれ数千人規模のホールですので集まった観客の中には演者固有のローカルルールについて把握していない方もおられたでしょう。
そういった方に「この人のライブに来てこんな態度はありえない」と言ってしまうのはちょっとどうなのかなと思います。たまたまCD聞いてちょっとライブ行ってみようと思って来た人もいるかも知れませんし。
一方で演者の方は、当たり前ですが自分の演奏によって集客している訳ですから出来うる限り最高のパフォーマンスを提供したいと思うのは当然です。その為には静かに集中できる環境が不可欠だったという事です。
で、このキース・ジャレットさんという方はそういったある種気難しい性格も知られていて、過去にも観客の雑音で演奏を中断した事があるそうです。
でもこの人、ピアノ弾きながら感情高ぶった時には結構でっかい声で喘ぐんですね。マイクがばっちり拾うくらい。
当然その声を余計だと思う人もいるでしょう。でもそれも彼の音楽の内だとする人もいて、ならライブでの客席からの雑音もその場特有の音楽の一部なんじゃないかとも思います。
更に言ってしまえば、観客もライブの参加者という前提なら、騒音で演者のパフォーマンスに影響が出た事も含めてその場でしか味わえなかった音楽なんだとポジティブに捉える事もできるのかもしれません。
まあ自分が当事者なら全く納得しないと思います。最初に挙げた「お前らもうちょっと静かにできないのか」と「客の生理現象の音ごときでライブを放棄するな」が入り混じったモヤモヤした気持ちになるでしょう。
もし、今回のこの結果を失敗だったとするなら、演者の性質を一見さんにも充分周知できなかった運営側(キースさんの裏方含む)に反省点があるのかなと思いました。
ライブ中、キースさんが客席に向かって「静かにしてくれ」とお願いする場面もあったという事なので、それに協力出来なかった一部の観客については個人的にはぶん殴りたいです。
でも今回、咳以外にも、曲が終わって拍手をするタイミングについてまで指摘していた方もいて、正直きっつ、と思いました。行きづら、と。
CDが売れなくなって久しいですが、こういう事でライブに足を運ぶのが億劫になってしまう人がいると思うと、いよいよ誰も得しないよなあと思います。
聞く側に対して敷居を上げるような流れは結果的に演者側の首を締めることになってしまうかもしれません。
で結局何が言いたいかというと、音楽ライブはなまものであるわけで、演者も観客もお互いできる範囲で協力しないとな、と。
今回はそれが噛み合わなくて起きた不運な事故という形ですが、アマチュアからプロまで結構皆忘れがちなのかもしれないと思い、備忘の意味も含めて書きました。
でもこのキースジャレットとかいう人のピアノ、引力まーじパねぇ。youtubeで聞くだけで結構ぐいぐい引っ張られるので、生で聞いた日にはどうなる事やら。なにこれ。世界には凄い人がいるもんです。
https://www.youtube.com/watch?v=zCKobOe7Cww&list=PLD8D0F31EFF3D8F40